

厚生労働省の調査によれば、自分の仕事や職業生活に関して強い不安や悩み、ストレスを抱えている勤労者は約6割にのぼり、2011年のうつ病などの患者数は95万人を超えていることが明らかであり、ストレスを上手にコントロールすることが必要とされています。そうした背景を受け、当センターでは、勤労者の方々のストレス状態をチェックし、リラクゼーションルームの利用、各種のメンタルヘルス・セミナーへの参加、カウンセリングなどを通して、勤労者自身が“自分のストレス状態への気づきとセルフ・コントロール(セルフケア)”を、自ら実践できるよう多面的に支援しています。
脳波は、ストレス状態を評価するための心理的指標とともに、生理的指標の一つとして用いるほか、リラクゼーションルームでのリラクゼーション体験の効果測定や“自律訓練カウンセリング”にも活用しています。
自律訓練カウンセリングでは、カウンセリングの中で、自律訓練法を中心とする心身のセルフ・コントロールの練習を行い、その学習が日常場面での生活行動のセルフ・コントロールにも般化していくことを支援します。脳波計は、通常の自律訓練法(標準練習)指導の補助ツールとして用いており、脳波計を用いることで指導がやりやすくなり、練習者のセルフ・コントロールへの意欲が高まっていることを実感しています。具体的には、自律訓練法の練習中に、練習者は心身のリラクゼーションを体験しますが、その主観的な感覚が脳波という客観的なデータによっても示されると、上手くできたという成功体験が得られ、それが安心感を呼び、自信につながり、その後の自宅練習にも主体的に取り組むようになっています。一方、自律訓練法の練習中に四肢重温感などのリラクゼーション反応が得にくい方もいます。例えば、完全主義傾向の強い方では、今感じている重たさでは不十分だからもっと強く感じなければならないと、理想の重たさを感じるまで長い時間やり続けたり、頑張って重たくしようと身体に力が入っていたりすることがあり、練習によってリラクゼーションを体験するというよりもむしろ疲労感を感じています。そうしたときに、α波がある程度出現する時点で信号音が鳴るようにセットしておきます。自分では普段よりも集中していないなあと思うあたりで音が鳴ると、練習者は「なんだあ、この程度でいいのか」と頑張り過ぎている自分に自ら気づいてくれます。それ以降、その感覚を頼りに適度なリラクゼーションを模索し、あれこれ工夫するようになっています。
今後、さまざまな角度から脳波計の活用方法を検討し、セルフケア支援のほか、職場復帰支援などにも役立てていくことを考えています。